Civil Watchdog in Japan

情報セキュリティ強化、消費者保護、情報デバイド阻止等、電子政府の更なる課題等、わが国のIT社会施策を国際的な情報に基づき「民の立場」で提言

Saturday, June 24, 2006

欧州34カ国の閣僚が障害者に優しい公的ウェブサイト構築に向け再スタートに署名

6月12日にラトビアにおいて、EU加盟国、EU加盟予定国、欧州自由貿易連合加盟国(EFTA)(筆者注1)およびその他の国々の計34カ国の閣僚が2002年6月13日に行った「eInclusion」(筆者注2)決議の要求(2006年半頃までに実行)期限を延期し、2010年までに実行する旨の「eInclusion」目標宣言書に署名した。
当初の目標設定から約7年後となり、今回の決議を担保する新たな法律の制定も予定されていないため、関係者の中には法的な拘束力のない単に道義的規範ないし同盟国からの圧力による強制しかないという問題指摘もあり、責任者であるEUの「情報社会およびメデイア委員会」委員長のヴィヴィアーヌ・レデイング(Viviane Reding)(筆者注3)に対する風当たりが強くなると見られている。

1.1999年12月の「eEurope」主導(initiative)の採択
IT分野における欧州域内での格差および米国との格差を是正し、全ての欧州市民のための情報社会を構築することを目的として、採択された。このイニシアティブは、EUの重要課題である雇用、経済成長および社会の結束を固める上で、重要な政策であると位置付けられており、また、2000年3月にEU加盟国の情報化を阻むさまざまな障害を分析し、以下の10の行動計画が公表された。その7番目が障害者対策である。
(1)デジタル時代における欧州の青少年教育(European youth into digital age)(2)より安価なインターネットへのアクセス(Cheaper Internet Access)(3)電子商取引の促進(Acceleration E-Commerce)(4)研究者及び学生の為の高速インターネット(Fast Internet for researchers       and students)(5)スマートカード(Smart Cards for secure electronic access)(6)ハイテク中小企業への支援(Risk capital for high-tech SMEs)(7)障害者の電子的な参画(eParticipation for the disabled)(8)オンライン健康管理(Healthcare online)(9)高度運輸サービス(Intelligent Transport)(10)オンライン政府(Government online)
この中では、デジタル技術の発展は、障害者が直面する各種障害を乗り越えるのに大きく寄与するとし、「Design-for-All」というコンセプトを用いた製品の開発をEU加盟国において推進することが計画されていた。しかし、障害者の電子的な参画を可能にする法的枠組みの整備はEU加盟国の間で格差が大きく、またEU市場における製品基準の統一も遅れているなど、欧州委員会の取り組む課題は多いとされてきた。なお、2000年以降のeEuropeのフォローの内容は以下のURLに詳しい。http://europa.eu.int/ISPO/basics/eeurope/i_europe_follow.html

2.「eEurope2002行動計画(アクションプラン)」の採択
前記2000年3月に発表されたeEuropeに基づく行動計画は、同年6月の欧州理事会において「eEurope2002」として、さらに改訂、具体化され採択された。e-accessibilityでは、eEurope2002の目標である「全ての欧州市民のための情報社会」の実現には、障害を持つ人々が情報技術への(可能な限り)最善のアクセスをすることができるようにすることが不可欠であるとし、W3C(筆者注4)が勧告として公表しているWeb Accessibility Initiative(WAI)のガイドラインの採択するというものであった。

3.2002年決議におけるアクセシビィテイの要件と加盟国の受け止め方
 W3C/WAIガイドラインの「4.優先度2(アクセスできないユーザーが出ないようなチェックポイント)」および「5.適合性レベルのレベルAA(優先度の1および2を満たすもの)」の遵守を求めるものであった。しかし、その後の取組みの前進はほとんど見られず前欧州閣僚理事会の議長国であった英国は全域における436の公共部門サイトの調査を命じ、2005年11月に公表された報告ではレベルAがわずか3%で、AAやAAAを満たした国は皆無であった。今回の34カ国の署名は以上のことが背景にある。また、今回の署名において各大臣は2007年までに「アクセイビィティの標準化と共通的なアプローチに関する勧告」に同意している。
 加盟国の中には今回の決議の対象が「公的ウェブサイト」のみであることは、政府や欧州委員会の設定した目標であり、より広い取組みが必要であるといった意見や障害者のIT分野の格差是正は公的部門の課題より一層高いレベルに位置づけるべきであるとしている。

4.英国におけるe-Governmentと取組みの特徴
英国の電子政府サイト(http://www.directgov.uk/)をみてすぐに気がつくと思われるが
公的情報の流れのシームレス化を最優先にすべく、政府機関間、政府と民間ビジネス間、政府と市民間(IDeA)、政府と地方自治体間(Info4local)、英国政府と外国政府間の情報の相互運用性を担保すべくe-Government Interoperability Framework(e-GIF)の徹底化を進めている。その1例がe-GIF認可機関(e-GIF Accreditation Authority)である。次の2つのプログラムを運用してその効果向上を意図している。(1)関係機関(外部サービスプロバイダー、教育プロバイダー、製造プロバイダー、中央政府機関およびその代理機関、地方政府、NDPBs(中央省庁の管轄下にない公益法人)、国営医療機関(National Health Service等)に、毎年認可条件を遵守しているかどうかについて検査に入り、その包括的報告書をまとめ、主な概要はウェブサイト上で公開する。(2)技術面から見た認可条件のチェック(相互接続、データの統合、コンテンツ、e-Servicesの アクセス性、ICカード、特定のビジネス分野の6部門を能力調査)するとともに、デザイン、開発・テスト、展開・支援、調達、販売、教育の役割について評価を行っている。なお、これらの機関業務は専門家による有料登録制となっている。(筆者注5)(筆者注6)

(筆者注1) EFTAは、現在ノルウェー、アイスランドの北欧2カ国と、スイス・リヒテンシュタインの計4カ国で構成されている。1960年に、イギリス、デンマーク、ポルトガル、ノルウェー、スウェーデン、スイス、オーストリアの7ヶ国で発足した。EUと同じく、EFTAは、加盟国間における貿易障壁 (関税や数量制限)を撤廃し、域内貿易の自由化を目標に掲げている。しかし、EUとは異なり、外部(第三国やその他の国際機関) との貿易については、関税や規則の統一を目指すものではない。つまり、EUが関税同盟に当たるのに対し、EFTAは自由貿易地域である。
EFTAの公式サイト:http://secretariat.efta.int/Web/EFTAAtAGlance/introduction
(筆者注2)2000年10月17日にEU閣僚理事会(European Council)は新たな情報と通信技術の出現はアクセスできる人間と出来ない人間との間に新たな差別を拡げるという観点から「貧困と障害者の社会からの除外に排除」を目指して『eInclusion @EUプロジェクト』を設置した。
eInclusion@EUのURL:http://www.einclusion-eu.org/
(筆者注3)http://ec.europa.eu/comm/commission_barroso/reding/index_en.htm
なお、6月11日の閣僚宣言ではICT(Information and Communication Technologies)に取り組む上で最優先課題は国家レベルでの中高年齢労働者に対する労働環境の改善が挙げられている。
(筆者注4)W3C/WAIのガイドライン「Web Content Accessibility Guidelines 1.0」は、障害のある人向けだけでなく、使用者の利用デバイスやツール(デスクトップ、ブラウザ、モバイル、車搭載PC等)を問わず、また利用環境(うるさい場所、暗い場所、手がふさがっている等)を問わず利用できるという目標を立てている。
(筆者注5)E-GIF Accreditation AuthorityのURL:
http://www.egifaccreditation.org/introduction.html
(筆者注6)e-GIFの管理者向けにその役割と優先課題について図解ガイドがある。
http://www.egifaccreditation.org/pdfs/Manager_Guidance.pdf

〔参照URL〕
http://europa.eu.int/information_society/events/ict_riga_2006/doc/declaration_riga
http://www.out-law.com/page-7005

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Saturday, June 17, 2006

米国連邦証券取引法に基づく電子メールの保存規則違反で和解金1500万ドルを支払う

6月10 日付の本ブログでも紹介した米国企業改革法(SOX法)の対応問題に関連する課題として、内部統制強化に欠かせない「文書化作業と保存・管理対策」が昨今話題となっている(筆者注1)。とりわけインターネット・トレードの普及がわが国でも個人投資家を中心に急速に拡大する一方で、米国では電子メール・データの保持を義務づける米国証券取引委員会(SEC)規則17条a-4(筆者注2)や全米証券業協会(NASD)運営規則3010条(筆者注3)等の遵守義務が厳しく監督機関から求められており、最大手証券会社モルガン・スタンレー社が去る5月19日にSECとの民事裁判(コロンビア連邦地裁)で和解に応じた。
わが国では、電子メールのみによる注文取引は行われていないため、電子メールの保存にかかる実務レベルの厳格な規則はないようであるが(筆者注4)、金融取引における一般原則としては取扱いルールの明確化は今後重要な課題となろう(筆者注5)。

1.原告と被告
原告;証券取引委員会(ワシントンD.C.)、被告;モルガン・スタンレー社(ニューヨーク州)

2.起訴理由
 (1)被告は少なくとも、2000年12月11日から2005年7月の間になされた原告における2つの調査(新規株式公開における株式割当ての実施状況、②同社の調査結果と投資銀行間の利益相反の実施状況)に関し、召喚状(subpoena)その他の請求に反し数万件の電子メールの作成を怠った。その結果、連邦証券規制法に基づき証券仲介業者・売買業者に課されるところの原告に適時に提出すべき文書の作成義務規定に違反した。

(2)被告は、前記の2つの調査に関し、2005年までの約4年間にわたり顧客とのやり取りを記録した電子メールを記録すべきバックアップ用磁気テープの作成を真摯に行わなかった。その結果、数千本のバックアップ用テープに記録されるべき電子メールの適時の作成を怠った。これら磁気テープは遠隔地保管業者(off-sight storage provider)となる被告の事務所又は関連会社において読み取り可能なものでなければならないものであるが、今日まで記録されるべきであった1,430万件の電子メールが保管されずに放棄された。

(3)原告の調査の間、被告は一定の電磁的記録文書の作成およびその完全性ならびに一定の文書の使用不可について誤った説明を行った。例えば、原告の調査の際に1999年分電子メール用バックアップテープは保管していないと述べたが、事実は同年以降のの電子メール用の数本のテープは存在した。被告は2005年からテープの作成を始めたのである。

(4)被告は投資分析調査(Research Analyst Investigation)において請求された電子メールの提出が遅らした。その原因は「検索可能電子メール・システム(the E-MAIL Archive)」へのローデイングが遅延し、その結果応答済(responsive)の電子メールの検索が行なかったことにある。被告の担当者は原告に対し電子メールの作成は完全であると述べていたが、同社の「the E-MAIL Archive」対応の優先度は低く、完全でなかった。

(5)被告の担当者は磁気テープの書き込み過ぎにより、2001年1月に約20万件の電子メールを破壊してしまった。その一部は原告の召喚状の対象となるものであった。

(6)以上の被告の作成義務違反行為により、原告の連邦証券取引法違反に関する効率的調査および法律遵守状況調査ならびに違反性の判断を遅らせた。

(7)本民事告訴状(Complaint)に記述のとおり、被告は「1934年連邦証券取引法(15 U.S.C.§78q(b))17条b項」(筆者注6)および「証券取引委員会規則(17 C.F.R. §240)17a-4条(j)」に定める作成義務違反が本裁判所において支持されることを希望する。原告は、被告の今後の違反行為の恒久的差止めと民事制裁金処分(civil Monetary Penalties)を求めるものである。

(筆者注1)IT化の取組みの中で今後規模にかかわらず各企業が最も悩む点の1つが電子化された法定書面の保管システムや膨大な量にのぼる電子メール等の保管問題やさらにはコンピュータ・フォレンジックス対応であろう。内部統制の有効性を担保するため文書が電子化されるとともに当該文書のデータの有効性の要件としては、①原本性の証明(改ざん・偽造のないこと、)、②盗難・盗聴対策、③保存データの変化・消失防止、④なりすまし対策・否認対策等の脅威対策がとられていることが挙げられる(NTT DATAの資料より引用)。なお、わが国の文書の電子化に関する法制整備の推移と概要もここで整理しておく。
(1)1998年(平成10年)7月1日施行「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(平成10年3月31日公布法律第25号)。
:納税者等の国税関係帳簿などの保存負担軽減のための、所得税法等に関する特例を定めた法律。その後7回にわたり改正されており、最新の改正は2005年3月31日の一部改正(施行は2005年4月1日)
(2)2001年(平成13年)4月1日施行「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律(IT書面一括法)」(平成12年11月27日公布法律第126号)
:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法に関する法制整備
(3)2001年(平成13年)4月1日施行「 電子署名及び認証業務に関する法律」(平成12年5月31日公布法律第102号)
:電磁的記録の真正性な成立の推定、特定認定業務に関する制度などを定める法律。最新の改正は2006年3月31日の一部改正(施行は2006年4月1日)
(4)2005年(平成17)年4月1日施行「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(e-文書法)」(平成16年12月1日公布法律第149号):政府の代表的なIT政策であるe-Japan戦略II加速化パッケージにおいて提言された「e-文書イニシアティブ」すなわち「法令により民間に保存が義務付けられている財務関係書類、税務関係書類等の文書・帳票のうち、電子的な保存が認められていないものについて、近年の情報技術の進展等を踏まえ、文書・帳票の内容、性格に応じた真実性・可視性等を確保しつつ、原則としてこれらの文書・帳票の電子保存が可能となるようにすることを、統一的な法律の制定等により行う」というものである。この統一的な法律が「e-文書法」である(NTTデータ経営研究所レポートから引用)。前述の法律等により、これまで電子文書(最初から電算機を使って作成した文書データ)は文書と認められてたが、紙文書をスキャナで取込んだ電子化文書(イメージ化文書)は文書と認めておらず、そのため紙文書を廃棄できなかったが、この法律によって電子化文書も一定の要件で認められ、紙文書の廃棄が促進されると予想される。なお、2005年5月に経済産業省は「文書の電磁的保存等に関する検討委員会の報告書(文書の電子化を促進するためのガイドライン)」を公表している。http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/e-doc/kentouiinkai_houkokusyo.pdf
また、同法施行規則(平成17年3月29日付経済産業省令第32号)のURLは次のとおり。
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/e-doc/syourei.pdf
(筆者注2)わが国や米国においても極めて一般的に引用されるSEC規則17a-4であるが、その内容についての法的な意味での正確な解説はあまり見ない。どちらかと言うと電子文書のバックアップやアーカイブ技術の必要性を説く企業サイト(シマンテック、ベリサイン、ヴェリタス等)の情報が中心である。本来的には、比較金融制度、比較法の観点からは欠かせない作業と考えるが、今回は同項に関するSECの解釈集と条文のURLを紹介しておく。
http://www.sec.gov/rules/interp/34-47806.htm
規則の条文自体のhttp://www.law.uc.edu/CCL/34ActRls/rule17a-4.html   
なお、SEC規則等に内容について要約した資料がヴェリタスの日本語サイトにあるので参考にされたい。
http://eval.veritas.com/ja/JP/downloads/pro/ev_wp_compliance_ostermanresearch.pdf
(筆者注3)NASDの運営規則3010条は、加盟証券会社に対する米国証券取引法など規制・監督法の遵守内容を確認する際の最低条件を定めるものとしてある。また、監督に当たってあくまで最終責任は個々の証券会社にあると明記されている。なお、遵守義務の強化を図る目的で同規則同条C項の改正が行われ、本年7月3日から施行される。
http://nasd.complinet.com/nasd/display/display.html?rbid=1189&element_id=1159000466
(筆者注4)わが国のインターネット・トレードのサイト例で見ると以下のような説明がある。
「電子メールは、補完的な連絡手段として利用します。電子メールによる注文は受付けていません。登録した電子メールアドレス宛に、当社から新規公開株式、セミナー等の案内に関する電子メールを送信する場合があります。」
なお、日本証券業協会が2005年12月に取りまとめたガイドライン「インターネット取引において留意すべき事項について」において、①取引公正性の確保および顧客との紛争の未然防止のため、ホームページ又は電子メールによる交信内容について一定期間、記録することが望ましい、②法令により記録の保存義務がある法定帳簿書類のほか、ホームページ又は電子メールによる交信の内容についてもその重要性等必要に応じ保存(改ざん防止策も含め)することが考えられる、と記されているのみである。
(筆者注5)金融商品のオンライン広告、例えば「ミューチュアル・ファンド(オープンエンド型投資信託)」の商品性からみた複雑性に対する証券取引法等法規制のあり方について「デューク・ロー・スクール」論文がある。http://www.law.duke.edu/journals/dltr/articles/2001dltr0019.html
(筆者注6)同条文のURL;http://www.sec.gov/divisions/corpfin/34act/sect17.htm
〔参照URL〕
SECのコロンビア連邦地裁に対する告訴状;http://sec.gov/litigation/complaints/2006/comp19693.pdf
解説記事;http://www.out-law.com/page-6931、http://www.law.com/jsp/article.jsp?id=1147251933246

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Saturday, June 10, 2006

米国SECが企業改革法(SOX法)第404条の内部統制要件実現の具体的行動計画を公表

最近時、監査法人サイトや金融専門雑誌等において米国企業改革法(the Sarbanes-Oxley Act of 2002)の解説記事が頻繁に出ている。同法が制定された背景は言うまでもなくエンロン事件等傷ついた証券市場の信用の建て直しであるが、その主な内容は、①監査(内部・外部)の独立性強化、②経営社の責任の厳格化・明確化、③情報開示に強化等多岐にわたっており米国の公開会社(public company)に適用される。
すなわち、わが国の企業にとって米国の証券取引委員会(SEC)に登録または登録予定している企業の子会社や支店には同法が適用されるし、また第404条「経営者による内部統制の評価」については今後わが国の法令・基準等に取り入れられることは間違いないといえる。
去る5月17日にSECは①公開会社のための内部統制遵守ガイダンスを公開会社会計監視委員会(the Public Company Accounting Oversight Board;PCAOB)と共同で策定する(これらの背景としては最近数ヶ月間にわたる投資家、公開会社、監査役等から大規模なヒアリングやコメントを元に分析している)、②とりわけヒアリングで指摘された最大の課題は中小企業(後記GAOの資料では資本金7億ドル以下)のおける対応が時間的に間に合わない、対応費用の負担問題等から遵守期限の延期問題や上場廃止を意図する企業も出ている(筆者注2)ことなども踏まえ、今後の行動計画を公表したので概観する。
 なお、SOX法の今回取り上げた第404条問題は一連の逐条的なSEC規則の制定作業の一部である。その長期にわたる作業の全体像を鳥瞰する資料があれば筆者としても勉強したい。

1.5月10日のSEC円卓会議と最近数ヶ月間の第404条の運用と効果についての各方面からのヒアリング状況
(1)SOX法成立2年目を迎えてこれまでの関係業界・公的機関からの意見の集約のための円卓会議の開催
 5月10日に開催されたが、それに先立って5月1日までに広く関係者から内部統制に関する報告および監査規定に関し意見を求めており、この集約結果も含め円卓会議で議論が行われた。(筆者注2)(筆者注3)(筆者注4)
(2)4月23日に公表された「小規模公開会社におけるSEC諮問委員会最終報告(Final Report of the Advisory Committee on Smaller Public Companies to the SEC )」(筆者注5)
(3)4月に連邦会計検査院(GAO)が取りまとめた「SOX法の小規模公開企業への適用ににあたり検討すべき重要項目に関する考察結果(Sarbanes-Oxley Act:Consideration of Key Principles Needed in Addressing Implementation for Smaller Public Companies)」(筆者注6)

2.今後SECが取り組む行動計画
(1)公開会社の経営者向けガイダンスの策定の準備
 まず第404条に関する経営者向けガイダンス草案「Concept Release」の発行と同時にすべての公開会社が必要かつ関心を持つところのSECが最終的に目的とする経営面の査定経営手順案についてのパブコメの募集を行う。また、SOX法第404条(a)項に定める①経営者による査定時における社外監査役の適切な役割、②SECが関心を持つ第404条(b)項に定める外部監査役による監査証明の代替性についても意見を求める。
(2)SECは中小企業の法対応を支援 するため、従来からCOSO(the Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission) (筆者注7)の活動を支援してきたが、財務諸表の内部統制に関し、すべての公開会社が今後策定するガイダンスに基づき適宜対応してくれることを期待する。
またSECとして財務諸表に基づき経営者がいかに内部統制を図るかについてガイダンスの策定を行うことで中小公開会社が有用的に第404条(a)項の査定を完全なものに出来るようCOSOの追加的ガイダンスの範囲についても考慮中である。
(3)SECに出されたコメントについてみると、第404条の経営者の査定につきSECが意図した経営者からのトップダウンであり、完全に正確なリスク判断に基づくものではない。今後策定するConcept Releaseに対して寄せられた意見・情報および予想されるCOSOガイダンスから、財務諸表に基づく内部統制についてトップダウンでありかつリスク判断の実行を可能とする経営者向けガイダンスを発刊する予定である。
本ガイダンスは、404条報告につき加速的対応免除会社(non-accelerated filers)(筆者注8)および小規模公開会社の対応を確実にするため、SECは当該ガイダンスにつき企業の規模や個々の企業の実情に応じられるよう配意する予定である。

2.PCAOBの監査基準の改正
PCAOBは、本年5月17日に「財務諸表の監査時における財務諸表に対する内部統制―監査基準第2版―の改正案」を公表した。この内容はSECの提案を受けたものであり、主な改正点は次の通りである。なお、SECはPCAOBの監査基準第2版が公益ならびに投資家保護にとって一貫性のあるものとなることを保証するため、PCAOBと緊密な連携作業を行う。
(1)監査人が統合的監査において詐欺的要素に関するリスクや重大な過ちに的を絞った監査を行うことを保証するよう追い求めること。
(2)2005年5月16日付けでPCAOBが公表したガイダンスに含まれる重要な概念を組み込む。
(3)仮にあるとすれば、内部統制の効率化に向けた会社の手順の評価に対する監査人の役割を取り上げ、明確化する。

3.PCAOB検査プログラムに対するSECの監視内容等
2006年5月1日に、PCAOBは「2006年検査目標」は監査人が監査基準第2版に基づき(1)費用削減効果的な効果をあげているかどうか、②監査人の活動が2005年5月、11月に発表したガイダンスに準拠しているかどうか、である旨発表した。SECのPCAOBに対する監視の一環として、SECの要員はPCAOBの検査プログラムも含め運用内容を監視する。とりわけ、2006年のPCAOBの検査完了時において、SECの要員はPACOBの検査において監査法人に対して前記声明の実現につき適用を積極的に働きかけたかどうかにつき検査を行う。
(2) 加速的対応免除会社(non-accelerated filers)に対する遵守期限の延期
SECは加速的対応免除会社およびその監査人に対し、①近々SECが策定しようとしている経営者向けガイダンスの恩典を受けること、②PCAOBの改正基準第2版の評価・適用の機会を提供するため、加速的対応免除会社に対し404条の対応期限の短期の延期を認める予定である。しかしながら、それらの会社においてもその延期はSOX法第404条(a)項が定める会計年度開始時点または2006年12月16日までに経営者による査定(management assessment)を実施することが前提となる。

(筆者注1)5月17日付けのSECのリリースでも、SEC委員長のクリストファー・コックス(Christopher Cox)は中小企業の経営者や連邦議会の議員から指摘されているSOX法第404条の免除例外はない旨コメントしている。すなわち、投資家保護の観点から公開企業の規模の大小、外国・国内企業を問わないとしている。
(筆者注2)円卓会議の議事録のURL: http://www.sec.gov/spotlight/soxcomp/soxcomp-transcript.txt
(筆者注3)SEC事務局からの論点整理のURL:
http://www.sec.gov/spotlight/soxcomp/soxcomp-briefing0506.htm
(筆者注4)円卓会議のライブビデオも見れる。
http://www.connectlive.com/events/secicr2006/
(筆者注5) http://www.bio.org/tax/sox/20060418.pdf
(筆者注6) http://www.gao.gov/new.items/d06361.pdf(全93頁)。
(筆者注7) 「COSO内部統制フレームワーク」とは、1992年に米国のトレッドウェイ委員会組織委員会(COSO:the Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)が公表した内部統制のフレームワークのことである。今日、事実上の世界標準として知られている。具体的には「要約」「フレームワーク」「外部関係者への報告」「評価ツール」(1992年)、および「『外部関係者への報告』の追補」(1994年)という5分冊からなる文書で、基本的な理論や考え方に加え、内部統制評価ツールなど内部統制の具体的な方法論と枠組みが示された。この内部統制の枠組みが「COSOの内部統制フレームワーク」あるいは「COSOフレームワーク」と呼ばれるものである。
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/coso.html参照。
(筆者注8)SECは2005年3月2日付けリリースで、2003年6月5日に遵守期限の延期措置を再度延期する措置を行っている(2006年7月15日または7月15日以降に来る最初の財務報告から内部統制に遵守が義務付けられる。)。その対象となるのがnon-accelerated filers(時価総額7,500万ドル以下の公開企業)および外国の非公開証券発行者である。
http://www.sec.gov/news/press/2005-25.htm

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英国政府は「2006年消費者信用法」の今後2年にわたる具体的施行の総合計画を公表

去る5月25日に貿易産業省(DTI)担当大臣イアン・マッカートニー(Ian McCartney)は、本年3月30日に国王の裁可を得て成立した「The Consumer Credit Act 2006」(1974年消費者信用法の大幅な改正法で、主たる改正点は①貸手・借手の間の公平性、②与信取引の透明性の確保、③より競争的な信用市場の創造であるとされている)の今後2年間にわたる 具体的施行スケジュールを公表した。
わが国では消費者金融問題をめぐる自民党の貸金業規制法の改正、新規参入規制論議や金融庁が取りまとめつつある有識者懇談会(正式には「貸金業制度に関する懇談会」)の結論が注目されるところであるが(筆者注1)、他方でこれらの問題は個人で解決するにはあまりにも社会的影響が大きいともいえる。その意味で5月31日に可決成立した「改正消費者契約法」に基づく適格消費者団体による差止請求や損害賠償請求訴訟の取組みの行方も併せて注目しておく必要があろう。(筆者注2)

1.2006年消費者信用法の主な改正点(筆者注3)
(1)消費者保護の観点から、旧法(137条から140条)が定めていた「不当(extortionate)な与信テスト」の債務者による立証責任を排除し、主観的不公正さに関するテストの創設により、消費者がより簡単に不当に高い金利を負担していることを証明する「unfair credit [a1] test」に基づき提訴できることとした(140条A,B項)。この場合のunfairの事実不存在の立証責任(burden of proof)は貸し手側にある。
(2)消費者信用業者に対する法規制(監督制度)の強化として公正取引庁(OFT)が許認可機関となり、違法業者を消費者信用市場から排除する(24条A項)。また一定額の免許手数料、更新料が課される(6条A項)。
(3)旧法では、消費者金融や労働契約に基づく与信契約(従業員が雇用者からの借入れ)について、その融資目的が事業性と否とに拘らず適用された。改正後も、25,000ポンド(約515万円)以下で全部又は主たる目的が事業性のもののみ旧法が適用される。
(4)旧法は個人向け(個人事業主、権利能力なき社団、2名から3名からなる組合を含む)融資額が25,000ポンド以下の融資のみ適用するとしていた旧法から原則そのキャップを撤廃するとともに、個人(individuals)を定義から個人事業主などを排除し、個人のみの限定した(189条1項 )。すべての借り手が保護対象となる。また欠陥のある契約内容についての法執行のあり方につきより適切な取組みの手段を提供する。
(5)改正法は、債務者に対し定額信用供与契約(fixed-sum credit agreements)に基づき年1回返済額通知(annual statement)の送付を義務付けた(77条A項)。定額与信には①一定の与信期間、②定額、③分割払い、④条件付売買・与信契約が含まれる。このような規定がおかれた結果、この期間内に通知義務が怠った場合、債務者は金利の支払いや返済を強制されることはないことになる(既存契約についても適用される)。
(6)与信業者に2回連続した債務者の未返済後にOFTが制定した督促(arrears)または債務不履行(default)通知( notice)が義務化された(86条A項)。同通知を怠った場合、貸し手は契約に基づく法執行が出来ないし、また債務者は金利の支払い義務が生じない(86条D項)。
(7)金融オンブズマンによる裁判外紛争解決(ADR)が提供される。

2.今後の施行計画
(1)2007年4月以降・・借り手にとって前記「不公正テスト」規定が適用されるため、不公正に対する裁判への取組みが保障されるなど大幅な改善が可能となる。
また、同月から消費者は金融オンブズマンによるADRが可能となる。
(2)2008年4月以降・・貸し手において与信口座の現状に関する定期的な通知義務が発生し、一方与信事業者にとっても円滑な免許の取扱いが可能となる。

(筆者注1)わが国の消費者金融についての法規制を見ておく。(1)金利については現行2つの法律がある。「利息制限法」では、元本の額により年率15~20%の金利を上限に決めている。それを上回る金利は無効だが、罰則はない。一方、出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)では上限金利を29.2%(平成12年6月に40.004%から改定施行)まで認め、違反には罰則(5年以下の懲役若しくは1千万円、法人の場合は3千万円、併科もある。なお、Allaboutで横山光昭氏が法人の出資法違反の罰金額を最高1億円と説明されているが、これは貸金業規制法(貸金業の規制等に関する法律)違反の場合(51条が罰則規定)である。念のため)を設けている。このため実態的に貸金業者は利息制限法を無視し、出資法の上限金利にほぼ張り付いた金利設定を行っている。(2)さらに、問題とされているのは、業法である貸金業規正法43条の「みなし弁済規定」である。同条は①貸主が貸金業登録業者であること、②借主が利息として支払ったこと、③借主が任意に支払ったこと、④17条にいう書面(契約書面)を交付していること、⑤18条書面(受取証書(領収書))交付していること、これらの要件をすべて充たすことを要件として利息制限法を上回っても出資法上限金利以内なら有効なものとされる点である。実際、みなし弁済規定を厳格に守っている金融業者はまずいないといってよく、また他借り手が貸金業者に金利を下げて元本の返済に充てたいといっても簡単に応じることもまれであろう。結局、簡易裁判所への「特定調停申立て」や裁判所を通さずに弁護士や司法書士に債務者との交渉を委任する「任意整理」さらには訴訟にまで及んでいかねばならないケースが多いのが現実である。
(筆者注2)今回の消費者契約法の一部改正の検討の前提として、例えば平成16年9月に内閣府国民生活局は「諸外国における消費者団体訴訟制度に関する調査」を公表している。今般のわが国の団体訴訟制度自体、米国におけるクラスアクション制度やEU各国における消費者団体訴訟制度が下敷きになっていることは間違いなかろう。 http://www.consumer.go.jp/seisaku/cao/soken/file/kaigaihoukoku.pdf
(筆者注3)改正法の内容についてはDTIのサイトの解説については、Q&Aも含め今一説明内容が抽象
的である(金融庁の有識者懇談会の第7、9、15回資料でも説明不十分)。したがって英国書簡局(内閣府の1機関で以前は「Her Majesty’s Stationery Office」であった。公的部門の法律等情報を統括的に管理する中央機関)が作成した以下の改正内容の解説資料が最も正確で 旧法との関連が正確に説明されている。
http://www.opsi.gov.uk/acts/en2006/ukpgaen_20060014_en.pdf
〔参照URL〕
(1) http://www.dti.gov.uk/consumers/Finance/consumer-credit-bill/index.html
(2)Q&A; http://www.dti.gov.uk/consumers/Finance/consumer-credit-bill/FAQs/page24450.html

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Friday, June 02, 2006

米国の大手金融サービス機関のCEO等からなるNPOの最近の取組テーマと活動概要

米国BITS(正式にはThe Financial Services Roundtable)は、米国の大手金融機関(筆者注1)(筆者注2)97機関の最高経営責任者(CEO)およびCEOが指名した最高技術責任者(CTO)、最高情報責任者(CIO)、副社長等からなる諮問委員会、諮問協議会により活動を行っている。特に、国内の金融機関やその他重要な企業・機関、政府機関、技術提供企業、第三者サービス機関との協力関係に力を入れている。
 以下述べるとおり、BITSの現下の優先課題や取組みテーマは金融界全般ならびに金融監督機関・政府機関にとっても共通的重要項目であり、実際BITSは①FDIC,ICANN、DHS等関係機関への意見書(Comment Letters)の提出、②連邦議会での証言(Public Testimony)、③消費者への情報開示等その活動振りは注目に値するといえる。
また、技術提供事業者と金融サービス機関の相互協力により金融サービス産業において確立された最小安全基準評価基準をもとに公認商品評価テストを実施している点も、特徴的な活動といえよう。

1.BITS理事会からの基本的負託事項(基本方針)
(1)エレクトロニック・バンキングと金融サービスの成長への協力
(2)市場主導型の技術開発を優先することへの協力
(3)電子商取引に取り込まれる決済システムの中心となる産業界の役割・任務の維持
(4)金融取引における安全性、健全性、プライバシー保護に対する消費者の信頼の維持
(5)産業界全般にわたる資源とインフラの活用

2.2006年の主体的行動の優先取組み政策課題
(1)情報セキュリティ(なりすまし詐欺、情報漏えいおよびインターネット詐欺)
(2)生命保険会社の許認可における連邦監督法制化問題(筆者注3)
(3)年金受給者向け証券サービス(30年もの国債(筆者注4)、投資アドバイス、年金)
(4)マネロン対策
(5)証券取引委員会(SECのヘッジファンド、市場構造、SOX法404条問題(筆者注5))
(6)大規模災害対策
(7)郵便制度改革
(8)恒久減税(permanent tax cuts)、「経済成長及び減税調整法:EGTRRA(筆者注6)」の在り方)、「sub-part f」の在り方(筆者注7)、Business Activity Tax法案(筆者注8)
(9)バーゼルⅡ対応
(10)連邦通貨監督庁(OCC)、連邦預金保険公社(FDIC)による金融先買い(preemption)、高利貸し規制対策の統一基準化

3.目下の委員会での優先検討課題
次のような委員会で検討を進めている。都度テーマを見直しつつ追加などを行う
(1)セキュリティとリスクアセスメント(委員長:リー・ウィリアムズ(フィデリテイ投信会社))
(2)金融詐欺阻止対策(委員長:ワコビア社)
(3)ITサービスプロバイダー(委員長:バンク・オブ・アメリカ)
(4)決済戦略(委員長:コメリカ社)

4.BITSセキュリティ公認商品テスト・プログラム
(1)概要
金融機関が提供するシステムは取り扱うデータの安全性と健全性を保証しなくてはならない。本プログラムは、一般産業界が利用できる安全性を持ったソフトウェアのテスト機能を供給するとともに、技術面の各リスクや国家の重要インフラの保護に寄与する自己規制手段である。
(2)セキュリティ基準
セキュリティ基準は、各種商用ソフトウェアの最小限の基本となる特性と機能を代表する。この基準はテスト目的で作成される一方で、BITSメンバー企業内で技術調達、提案や内部開発計画に用いられる。
①マスター・セキュリティ基準(MSC)
NSCは、製品について次のような一連のセキュリティ特性の要件を提供する。
識別、否認防止(nonrepudiation)、オーソリ、信頼性、データ及びシステムの高品質性、監査、認証、セキュリティ管理、文書化ガイダンス等。
②製品のプロフィール
同プロフィールでは、次のような項目について説明される。
適用可能機器、認証システム、アクセス・コントロール、セキュリティ製品への適用、モニタリング等。

5.BITSの公認製品
①Pointec PC 4.3(ポンテック・モバイル・テクノロジー社製)
②Archer Smartsuite Framework Version 3.0(アーチャー・テクノロジー社製)
③VirtualVault(ヒューレット・パッカード社製)
これら製品テスト報告書はBITSのメンバー企業に請求できる。

(筆者注1)BITSは1996年に設立されたNPOで97社の業種は多岐にわたる。銀行グループ以外では例えば、保険持株会社(ACE INA Holdings,Inc.等)、株式投資会社(Affiliated Managers Group,Inc等)、クレジットカード会社(American Express Company等)、自動車系決済融資業務会社(Ford Motor Credit Company,Toyota Motor Credit Corporation等)、電気製品メーカー系個人法人向け融資業務会社(General Electronic Company等)、社債発行受託会社(Allied Capital Corporation等(筆者注2))、リスク管理・再保険、人材開発会社(Avon Corporation等)、オンライン証券会社(The Charles Schwab Corporation等)が上げられる。なお、同メンバーには関係機関としてアメリカ銀行協会、その他米国の銀行協会、カナダ銀行協会(CBA)、カナダ決済協会(CPA)、英国決済サービス協会(APACS)等が参加している。
(筆者注2)アライド・キャピタルの取扱商品は、投資社債(debt investment:特定の目的にため投資を募るもので、株式投資と異なり投資家は自ら資産を所有しないし利益の配分にも与からない。この融資のために担保を差し入れていた場合は、貸し手は借り手が返済を怠った場合は当該資産による返済を請求できる)、優先社債(Senior Debt:清算時に優先的に返済を受けられる社債)、劣後社債(Junior Debt又はSubordinated Debt)等である。
(筆者注3)「Optional Federal Charter問題」は、保険会社の規制・監督に関する現行法制は州ごとに免許を受けなければならず、銀行や証券に比較して不利益であるというのがそもそもの問題指摘であった。各州法も統一性にかけており、1990年代末頃から銀行・証券と同様に連邦法による監督制度を設けるべきか否かをめぐってNAIC(全米保険監督官協会)の働きかけや連邦議会での法案が出され、なお議論が続いている。その経緯などにつき次のURLに詳しい。http://www.aei.org/publications/pubID.24030/pub_detail.asp
(筆者注4) 米国では30年国債(あるいはそれ以上の長期国債)は2001年を最後に発行が停止されている。米国財務省が30年といった長期の債券はコストがかかると判断したこと、また当時の財政事情を考慮するとこのような長期の債券発行は必要ないと判断したことなどが理由であった。しかし、2005年5月に市場の様々な思惑に対して、前スノウ米財務省長官は同省が30年物の米国債の発行を検討していると述べており、その背景には、世界の主要国で長期国債に対する需要が高まりつつあることや、米国自身が社会保障制度改革などのための財源確保の必要に迫られたこと等があるといわれている。
(筆者注5) 米国企業改革法(Serbenes-Oxley Act:SOX法)404条とは、企業側に対し、財務報告に関する内部統制が有効に機能しているかどうかを毎年評価するよう要求する条項である。これにより企業は、独立した監査人から内部統制について監査を受ける必要がある(上場会社監視委員会(PCAOB)は、同法に基づき、会計監査業務の質を監視するために設立された機関である)。米国証券取引委員会(SEC)とPCAOBは本年5月10日に米国企業改革法(Serbenes-Oxley Act:SOX法)の404条について、意見聴取する公聴会を合同で開催したが、企業幹部と会計監査人は、同条項により会計業務が強化されたことを評価しつつも、莫大なコストを要する苦しい現状を訴えている。(筆者注6)EGTRRA(Economic Growth and Tax Relief Reconciliation Act 2001)は、2001年にブッシュ政権が選挙公約に基づいて議会に提出し同年6月に成立した。主な内容は、①個人所得税率の引下げ、②子女税額控除の拡充、③婚姻による税負担の軽減策、④教育貯蓄勘定への拠出限度額の引上げ、⑤遺産税の段階的廃止・贈与税率の引下げ、⑥IRA(個人退職勘定。米国の個人年金積立て制度。確定拠出年金型の個人年金))および401K制度の拡充等である。
(筆者注7) タックス・ヘイブンとは一般に 所得または特定の所得に対し税が全く課されないか、または課されても極めて低率であるような国や地域を指す)。このタックス・ヘイブンでは、 親会社がベース・カンパニーとなる子会社等を設立し、海外における企業活動の利益を当該子会社に帰属させることにより、企業グループ全体としての税負担の回避ないし軽減を図る租税回避が行われている。このタックス・ヘイブンの利用による租税回避に直接対抗する立法的対策として、サブパートF立法といわれており、この種の立法の代表例が1962年に導入された米国のサブパートF条項(subpart F provisions, Internal Revenue Code(内国歳入法典)951条-964条)である。この規定は,米国株主に保有されている被支配外国法人(controlled foreign corporation)の特定の留保所得を,実際に分配額として受領していなくとも,その持分割合に応じて米国株主の総所得に合算して課税するもので、 日本も1978年にこのサブパートF条項に類似した合算課税方式によるタックス・ヘイブン対策税制を導入している。
(筆者注8)2005年に109回連邦議会下院に提案された法案「Business Activity Tax Simplification Act of 2005(H.R.1956)」を指すと理解した。
〔参照URL〕
http://www.bitsinfo.org/index.html
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