Civil Watchdog in Japan

情報セキュリティ強化、消費者保護、情報デバイド阻止等、電子政府の更なる課題等、わが国のIT社会施策を国際的な情報に基づき「民の立場」で提言

Sunday, May 21, 2006

豪政府は社会福祉関連のICアクセス・カードの導入のためアドバイザーの入札告示

5月11日にオーストラリア連邦政府「社会保障・福祉サービス担当省(The Minister for Human Services(DHS) :の担当大臣ジョー・ホッキー(Joe Hockey))は、10憶オーストラリア・ドル(約830億円)の予算を背景とするスマート・カード・プロジェクト(ICアクセス・カード(Access Card))の中核となる個人・法人の専門アドバイザーを募るため、2つの入札告示(tender notice)を始めた(入札の詳細は5月15日に「Aus Tender」のウェブサイトに掲示されている。)(筆者注1)
同プロジェクトの主たる目的は、これから迎える社会的な不安、すなわち高齢化、病気等への対応を持ち、遠隔地管理機能を備えたコミュニティ社会作りである。この点は、欧米先進国における高齢化への取組みの先例として、わが国としても見逃しえない重要なテーマであろう。

1.アクセス・カード・プロジェクトの概要
 (1)現在同国で行われている17の健康保険・社会政策サービス、退役軍人カード(veteran card)および国家保険サービス(Medicare)(筆者注2)にかかるカードサービスをこのシステムに切替え、統合するものである。
(2)このカードの切替え、登録は2008年から2年間にかけて国民を対象に開始され、2010年前半から登録済者のみ具体的なサービスを受けることが出来ることになる。
(3)本カードシステムに伴い経済効果について大手コンサルティング会社であるKPMGは4年以上にわたり10憶9千万豪ドル(約904憶7千万円)の費用がかかる一方で、 10年以上にわたり30憶豪ドルの経費削減が図れるとの予想を行っている。
 (4)本プロジェクト推進のため同省内に「アクセス・カード局(Office of Access Card)」がすでに設置されている。

2.アクセス・カードの仕様概要とプライバシー問題 
DHSの資料では次の点が説明されている。(筆者注3)
(1)表面にはカードの名義人氏名、写真、裏面は保持者の署名の登録番号が表示される。
 (2) ICチップには、本人の住所、生年月日、子供や扶養家族等は記録される。また本人の選択に基づき、緊急時の連絡先、アレルギーの有無や内容、健康に関する留意事項、持病(chronic illnesss)、免疫情報(immunisation information)や臓器提供者(organ donor status)に関する情報を保存される。
 (3)個人情報管理に関して、政府の公文書によると、アクセスカード・システムの基盤となる登録システムは「Medicare Australia」、「Centrelink」(筆者注4)、「退役軍人省(Department of Veterans Affaires)」は別々なシステムに分かれており、そこにはいかなる機微情報や当該機関の固有情報は保持されないとされている。

3.募集目的
1つは、スマート・カードによる福祉・健康サービスを提供するためのリーダーとなるアドバイザー募集、2つは、カードの概念構築から実際の交付にいたるまでの間のモニタリングや監査を行うといったアドバイザーの募集である。また、同大臣の説明によると、オーストラリア政府この2つの政府自体から独立性を持ったアドバイザーの役割は、導入戦略全体にわたる問題と監査ならびにシステムの保証であると述べている。さらに、同省はプロジェクト専門の副長官も求めている。

4.募集概要
(1)締め切り:2006年6月9日午後2時
(2)勤務地:キャンベラ
(3)アドバイザー契約に当たり次の条件を要する。
①アクセスカードについて、費用面、実施スケジュールおよび品質ついて必須とされる最善の取組みについてのアドバイス
②商業ベースでアクセスカードを成功裏に適用させるため最適な構成についてのアドバイス
③技術面、既存の関連システムの統合およびビジネス手順に関する最適の取組についてのアドバイス
④必要な機器やサービスの購入に関連する調達や営業ベースの条件についてのアドバイス
⑤システム提供業者の事後的管理に関するアドバイス
⑥外部の利害関係者の意見聴取についての支援アドバイス
⑦プログラム全体にわたる枠組みの管理についてのアドバイス
⑧手順および必要な手段についてのプロジェクト管理
(4)応募方法
ファックス・Emailは不可とし、期限厳守のこと。
(5)顧問契約期間
 全体の契約期間は4年間とし、当初の2年間に加え任意期間2年間とする。
(6)募集に当たっての要件
全要件は入札要件(Request for Tender:RFT)に記載している。

(筆者注1)https://www.tenders.gov.au/federal/shared/rftdetail.cfm?p_id=2517&p_criteria=AZ3274&p_advert=1
なお、オーストラリアにおける政府事業等への入札要件(Request for Tender)の前提としては、まず政府入札システムへの登録から始まる。登録自体、国籍を問わない。
https://www.tenders.gov.au/federal/shared/register.cfm
(筆者注2) オーストラリアの保健制度は、民間部門と公共部門に分かれており、後者である National Health Service(国家保健サービス)は、政府の Medicare(メディケア)と呼ばれる。メディケアは公立病院での無料の治療、病院以外での医療費の援助などの医療サービスや医療プログラム、医師、専門医、メディケアに参加している眼科医などの開業医による無料の治療、または治療費の援助を提供しており、その財源は所得税を主とする一般税収で賄われる。全医療関連費用の約3分の1は、民間の健康保険を含む、民間部門を通じて支払われている。
メディケアは、医師が処方するほとんどの医薬品の費用についても援助しており、オーストラリアの永住者全員と、査証申請者の一部がメディケアのサービスを利用することができる。
http://www.dfat.gov.au/aib/japanese/health.html
なお、これらオーストラリアの福祉・移民情報等については非営利組織であるAdult Multicultural Education Services (成人多文化教育サービス) (AMES) は、現在、多文化言語および雇用サービスを専門とするオーストラリア最大のサービス提供事業者であり、政府との契約により支援され、毎年 50,000 人を超える人々への教育、サービスを成功的に提供している。 AMES は、日本語を含む85の異なる母国語を話す131カ国からの移民を援助しており、新しいオーストラリア市民とその家族、海外からの留学生、およびコミュニティへの多岐にわたるサービスの増加と向上のために、組織の財源を再投資している。
http://www.ames.net.au/livingInAustralia.asp?articleZoneID=2125&hContextId=40&lang=ja
(筆者注3)
http://www.humanservices.gov.au/idc.htm
(筆者注4)
Centrelinkはオーストラリア政府による退職者、求職者、学生、要介護者、寡婦、移民などに対する各種手当て、サービスを提供している。これら手当ての受給について難民、人道的移民永住ビザ保持者などについては待機期間なしに即時に支給される。オーストラリアには、必要と認める人に所得やその他の援助を行う社会的「セーフティネット」の制度がある。1997年以来、社会保険の支払いは「センターリンク」が単独に行っている。この機関は、その他の連邦政府のサービスへの窓口の役目も務めている。
政府機関と民間の組織が協力して、高齢者、障害者、病人、失業者、先住オーストラリア人、子持ち家庭や、非英語圏からの移民などを支援している。また、さらなる経済的参加や社会参加に意欲的かつ余裕のある人たちに対しては、様々な奨励策も導入している。
 オーストラリアの社会援助制度に対する新しい取り組みは、5つの原則に基づいている。すなわち、①サービスの実施、②経済援助の簡潔化、③財政刺激策と援助の改善、④相互責任および⑤社会協力の育成である。
  なお、これら政府の各省庁のサイトを読んで気が付くと思うが、多国籍・多言語化社会に極めて積極的であり、例えば「外務・貿易省(Department of Foreign and Trade)」のサイトでCentrelinkを見ると、なんと62カ国語で同じ内容が見れる。また、Centrelinkの日本語版を見ると同国内から日本語で福祉制度などについて照会する場合、通話料(公衆電話や形態電話の場合を除く)は一律25セント(約21円)と記されている。
http://www.centrelink.gov.au/internet/internet.nsf/languages/jp.htm

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