Civil Watchdog in Japan

情報セキュリティ強化、消費者保護、情報デバイド阻止等、電子政府の更なる課題等、わが国のIT社会施策を国際的な情報に基づき「民の立場」で提言

Monday, May 22, 2006

EUの電子政府強化に向けた2010年までの行動計画(i2010)が採択・公表される

去る4月25日に欧州委員会が採択した「電子政府行動計画(EU i2010 eGovernment Action Plan)」の概要によると25カ国における行政の効率化(政府機能の近代化)により税収の削減効果は毎年数千億ユーロに達すると見込まれている。
情報・通信機能の近代化・効率化がキーとなるのであるが、電子インボイス(筆者注1)(筆者注2)(筆者注3)による公共調達の100%実現により、EU全体で毎年約3,000億ユーロ(約42兆3,000億円)の経費が浮くと予想しており、すでに加盟国25カ国は2005年マンチェスターで署名を行っている。(筆者注4)
 この署名に基づき、このほど委員会が採択した行動計画は2010年までにすべてのヨーロッパ人が加盟国と提携して明確に利益を理解できるかたちで次の5分野において取り組み目標を達成するというものである。

1.いかなる市民も後に残さない:2010年までに性、年齢、国籍、所得ならびに障害の有無に拘らずすべての市民がデジタルテレビ、パソコン、携帯電話等広範囲の技術にアクセスできる環境を実現する。
2.効率性の向上:英国の年金プログラムの変革は、公務員の窓口での対面サービスのための時間を50%開放し、その他の業務のための時間的余裕を作り上げた。すべての加盟国は2010年までに「効率性向上における高いレベルの効果」および「行政面の負荷削減」について情報通信技術を使って成し遂げる。
3.電子公共調達(electronic public procurement)の適用:加盟国は2010年までに公的分野のオンライン調達について100%又は少なくとも50%までを実現し、年間400億ユーロの予算節減を可能にする。
4.EU全体にわたる公的サービスへのアクセス可能の実現:加盟国政府はウェブサイトの利用や公的サービスの相互利用における国家電子認証による安全なシステムを確立する点について同意した。この行動計画では2010年までにその実現を見通した。
5.市民の参加権および民主的な決定プロセスの強化:行動計画は、政策決定にあたり国民の効率的政治参加を実現するため、情報通信技術を用いた実験の支援を提案する。

(筆者注1)「インボイス」は貿易取引において必須とされることから、わが国の専門家(英和辞典、翻訳ソフトも含め)も含め「送り状」と訳すことが一般的である。しかし、これは明らかに誤訳であり、正しくは「請求書」である。すなわち英国の起業者向け(株式会社や個人所業主)政府支援サイトでは顧客向けに「commercial invoice」を発行する場合の内訳項目に関する法的要件を解説しており、また付加価値税(VAT)の登録事業者の場合についても同様に説明している。ちなみにインボイスには次のような種類がある。①commercial invoice(商品の売買時に使用する。商品の明細、支払期日、船積予定、単価、合計等を明記する)、②customs invoice(税関用インボイスで輸出通関時に申告用に使用する)、③proforma invoice(見積書と同じ役目を持つもので、輸入相手国が事前の輸入許可や輸入認可などを義務付けている場合に、輸出車が買い手に同インボイスを事前に送り、輸入国政府の輸入許可を受けるのが目的)、④tax invoice(国内取引で消費税、物品税など中間間接税がかかる場合に使用する)、⑤shipping invoice(船便や航空便の出荷時に貨物代金以外にかかる費用の請求を買い手に行う際に使用する)。
 電子インボイスは、これらのインボイスを従来の紙ベースから電子署名に基づく電子書類をインターネット経由で税関、買い手など送付するとともにファィリングするもので電子商取引化において欠かせないものである。
(筆者注2)付加価値税 (VAT)は、品物やサービスの公的または私的な消費に課される税をいう。流通チェーンや生産のすべての段階で徴収され、各段階で加えられる価値に基づいて国に支払われるため、「付加価値税」という名前がついている。付加価値税は一般的に、課税対象となる事業者によって支払われなければならないが、各事業者は、原則的に、販売する時に付加価値税を課し、原則的に、購買する時に支払う付加価値税額を差し引く権利がある。結局、この税金は、購入する時に付加価値税を差し引くことのできない「最終消費者」が負担する間接税である。
(筆者注3)EUにおいてVATの請求書に関する加盟国間の規則の統一化と電子化に対応するため、閣僚理事会指令(2001/115/EC)が2004年1月1日付けで発効している。そこでは請求書の発行者や内容が真正であることを保証するため「デジタル署名(電子署名ではない)」又は「EDI(電子データ交換)」の方法が定められている。
http://europa.eu.int/eur-lex/pri/en/oj/dat/2002/l_015/l_01520020117en00240028.pdf
(筆者注4)欧州委員会が公表したEU加盟国における電子政府の経済的効果の例を見ておく。イタリアでは、2003年中にパソコン購入にかかる費用が電子公共調達の導入により平均34%削減し、それまでの間に32億ユーロ(約4,512億円)の経費節減を実現した。またポルトガルでは、電子公共調達により30%の経費削減を実現した。

〔参照URL〕
1.ニュース・リリース:http://europa.eu.int/idabc/en/document/5542/194
2.行動計画の全文:http://ec.europa.eu/information_society/activities/egovernment_research/doc/highlights/egov_action_plan_en.pdf

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