Civil Watchdog in Japan

情報セキュリティ強化、消費者保護、情報デバイド阻止等、電子政府の更なる課題等、わが国のIT社会施策を国際的な情報に基づき「民の立場」で提言

Wednesday, October 04, 2006

AOL 9.0バージョン(Free version)はスパイウェアの要件を正確に再現

8月28日に筆者が加入しているハーバード・ロースクールのバークマン・インターネット研究センター(Berkman Center for Internet & Society)等が協力して活動しているNPO組織、StopBadware.org(筆者注1)が、標記AOL 9.0(フリーウェア版)をバッドウェア(スパイウェア)としてAOLに対し公開質問状を提出した。この件は、わが国でも8月30日付けで複数の関連ニュース(といっても内容はまったく同じであるが)(筆者注2)で紹介されているが、そこで 指摘されている問題点は必ずしもスパイウェアの問題点についてセキュリティの専門的視点から述べているとはいえない。
そこに隠された問題点は記事内容の不正確さである。IT分野での曖昧・正確性を欠く記事は消費者の混乱を招くだけで、行わないほうがまだ良いといえる。
やや時間がたってしまい紹介に躊躇していたが、9月27日付で同センターからテスト結果に基づく新たな「Badware」の警戒を指摘する報告があった(筆者注3)。スパイウェア問題は実は単純なハッカー対策では不十分である。つまり、ビジネスと非ビジネス(倫理観を持たない企業の経営活動)の境界線上の問題なのである。これは超大企業であっても例外ではない。その点で果敢に取組んでいる同オルグにエールを送る意味と、わが国のこの分野での取組みの重要性(筆者注4)を指摘する意味で紹介する。
なお、同オルグの「Badware reports」画面の右欄に注目して欲しい。世界のBadware名と非Badware名が具体的に記載されている。一般のユーザーに優しくかつ有効な情報提供といえよう。

1.AOL 9.0がSpywareたる具体的要件
(1)開示説明なしに追加的ソフトウェアをインストールする(いい加減なインストール)。
(2)ユーザーに一定の行動を無理強いする(コンピュータの自由な使用を妨げる)
(3)Internet Explorer上にAOLのツール・バーを追加する(開示なしにブラウザソフトの変更を行う)。
(4) Internet Explorerのツール・バーにアイコンを追加する(開示なしにソフトウェアの変更を行う)。
(5) Internet Explorerの「お気に入り」に勝手に追加する(開示なしに他のソフトを変更する)。
(6)AOL Deskbarをユーザーのタスクバーに追加する(開示なしに他のソフトを変更する)
(7)自動的にソフトウェアをアップデートする(いい加減なインストール)

2.悪意のかつ非開示に関するスパイウェア行為の具体的問題点
(1)AOLのソフトに添付されて「RealPlayer」「QuickTime」「AOL You’ve Got Pictures」「Screensaver」「Pure Networks Port Magic」「Viewpoint Media Player」がインストールされるが、この点についてユーザーはなんら明確に通知されない。ただし、「QuickTime」と「Viewpoint Media Player」はAOLソフトウェアの権利に関するページで言及される。しかしながら、ユーザーが「AOLソフトウェア」のページにたどり着くにはAOLのプライバシー・ポリシーをクリックして、さらに2番目の「ソフトウェア」の言葉をクリックしなければならない。すなわち、ユーザーはこれらのソフトについてOSの追加・削除の機能を使わない限り、これらのソフトがインストールされていることさえ知らないのである。
(2)ユーザーに一定の行動を強いる点である。テスト中であるインストール後1日後にAOLのポップアップ・ボックスが表示される。そこではアップデートを無理強いされる。すなわち、ユーザーはダイアログ・ボックスを見るとアップデートしか選択肢がなく(×印がない:クローズできない)、かつ多数のウィンドウズの中でスクリーン上の一番前面に表示される。
(3) Internet ExplorerにAOLツールバーを半強制的に追加する。「はい」をクリックするか「アンインストール」してくださいとあるが、「はい」をクリックすると関連のサイトにリンクするのみで、その間にユーザーが拒絶する機会について
明示しない(インストール後にアンインストールの説明をするのは適切な開示方法とはいえない)。
(4)AOLのセット商品である「AOL Deskbar」では、自動的にアップデートするか否かの選択肢があり、初期値設定時にこのオプションがチェックされるが、最初の画面上でユーザーはこのオプション権にもかかわらず自動的にアップデートされてしまう。

3.AOLへの勧告
StopBadware.orgは以下の勧告をAOLに対して行った。AOLの広報担当者はユーザー・インターフェイスについて改善を約束しているが、さらにウォッチしていく必要があろう。
(1)AOL 9.0のインストールの間、追加ソフトのインストールについてのユーザーの同意を求めるよう十分説明する。
(2)ユーザーが自主的に閉鎖できないダイアログボックスの使用によって一定の行動を強制しないこと。
(3)AOLのインストールの間に追加的なコンポーネント・ソフト(ツールバー、お気に入り等)がインストールされることをユーザーに開示すること。
(4)AOL Deskbarがタスクバーにインストールされることや自動的なアップデートについてユーザーへの説明を十分行うこと。

(筆者注1)StopBadware .orgの構成メンバーは、ハーバード・ロースクールのバークマン・センター(Berkman Center for Internet & Society)(サイバー法の専門家集団)、オックスフォード大学インターネット研究所(Oxford Internet Institute)(インターネットの総合研究機関)、消費者報告WebWatch(Consumer Reports WebWatch)であり、スポンサーはGoogle、Lenovo、Sun Microsystemsである。
http://www.stopbadware.org/
同機構の報告書の特徴は、丹念なテスト結果に基づき(1)Badwareとしての特徴(スパイウェアとしての行動の特性を分析)を簡潔に整理、(2)非公開の部分である具体的な違法性分析、(3)ソフトウェアの製造者への改善勧告とフォローである。

(筆者注2)今に始まった話ではないが、翻訳の原典とした記事自体がStopBadware.orgが公表したものではなく、海外のメデイアが要約した記事をもとにいわゆる翻訳専門家が訳しているので、コンピュータセキュリティの専門知識が求められる問題であるにも拘らず、内容について具体性・正確性に欠ける。

(筆者注3)9月27日に公表されたBadwareは「WinAntiSpyware 2006(Unregistered Version)」
である。このソフトは唯一完全なバージョンへのアップグレードを誘導する「nagware」「extrotionware」と呼ばれるソフトである。また、同ソフト同プログラムが何時自動起動するのか、プログラムのバックグラウンドで継続的に実行しているのか、ユーザーの同意なしにアップデートをダウンロードするのかなどについて開示しないという問題がある。なお、同報告書は同ソフトのBadwareとしての特徴を次の4点にまとめている。
(1)コンピュータの適正な使用を妨害する:雑音を交えたポップアップ広告を表示してユーザーの冷静な判断を麻痺させる。
(2)いい加減な機能説明:大げさにコンピュータの機能の脆弱性を指摘して危機感を煽る。
(3)いい加減なインストール:ユーザーの同意なしに自動的にアップデートする。
(4)開示なしにコンピュータの使用を妨害する:自動的にプログラムを起動させる。
http://www.stopbadware.org/reports/reportdisplay?reportname=winantispyware

(筆者注4)例えば、警察庁の@policeの「世界のセキュリティ事情」コーナーは現在準備中である。筆者の記憶では一時期はレポートが載せられていたように思うのであるが(ただし解説の精度と言う点では今一番であったが)、StopBadware.orgのレベルを期待したい。

〔参照URL〕
http://www.stopbadware.org/reports/reportdisplay?reportname=aol082706

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