ドイツ連邦政府のメルケル首相がウクライナの新首相に送ったメッセージとは?
わが国のメデイアでも報道されている通り、ウクライナの元首相であったビクトル・フェデロビッチ・ヤヌコビッチ(Viktor Fedorovych Yanukovych:フルネームではそうなる)氏が首相に復帰することとなった。同氏は親露派でありまた最大野党の党首である。ドイツ連邦政府内閣のメルケル首相が8月7日に早速祝電を送った内容は、以下の通り極めて簡単なものであるが、背景を含め細かに読むとまさにドイツが今取り組んでいる多面的国際戦略の一面が読み取れよう。
さらに、わが国のメディアでは詳しく紹介されていないが、NATOとウクライナの関係強化を巡る旧ロシア連邦の国々を巡る国際戦略の動向もその伏線に見て取れる(筆者注1)。
「わが親愛なるウクライナ国の首相殿
私はあなたがウクライナの首相職を引き継いだことにお祝いの言葉を送ります。あなたに今後待ち受ける各種の任務につき、幸運とその成功が訪れることを期待します。
わが国は、貴国が法律に基づき(筆者注2)独立、安定、かつ民主的なウクライナ国家となることに強い関心をもって見守っています。また、わが国政府は、貴国の改革を支援するとともにNATO機構(Euro-Atlantic Institutions)とのより関係強化(筆者注3)を強く希望するものです。」
ドイツ連邦 首相 アンゲラ・メルケル
(筆者注1)NATOとウクライナの最近の関係強化の推移を簡単に見ておく。
【2002年11月3日】 NATO・ウクライナ行動計画(プラハ・サミットで採択)であり、この実現化に向けた責任はウクライナにあり、そのための課題は、①民主主義、②法の支配、③人権保護、④市場経済の強化である。最大の優先課題はNATOが支援するのは防衛問題と国家の安全対策である。
具体的な内容は以下の通りである。なお、ウクライナの取組みの進捗状況につき、2年に1回NATOとウクライナの外相級が準備した報告書に基づきNATOで査定会議が開かれている。
第1節 政治および経済問題
1.政治問題と安全問題
(1)国内の政治問題
権力の分離、司法の独立性、民主的選挙、政治的多元性、言論の自由、少数民族や宗教面の廃止である。とりわけ法制度改革の中心は欧州評議会の人権条約への参加である。
(2)安全強化に向けた国際的な政策
自由なヨーロッパの実現、テロとの戦い、兵器の大幅削減、地域の不安定性や安全面の脆弱性の解決である。
第2節以下省略
なお、米国ブルッキング研究所の副所長兼外交政策部長のカルロス・パスカル氏(Carlos Pascual)は8月3日付のヘラルド・トリビューン紙において、今回のウクライナの組閣について触れつつ、またオレンジ革命の意義、国民の意識の変化などを踏まえ、ウクライナのNATOへの積極的な加盟の姿勢ならびにロシアとの友好関係強化を呼びかけている。なにせ、同国は、本年5月の調査で年率成長率は8,5%であり、人口4,700万人を擁する国である。
http://www.brookings.edu/views/op-ed/pascual/20060803.htm
また、8月5日の朝日新聞によると、新内閣では、「我々のウクライナ」幹部のタラシュク外相が、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を進めてきたグリツェンコ国防相とともに留任。大統領に近いルツェンコ内相も留任した。安全保障分野は、これまで通り欧米圏への統合を推進できる布陣となったとある。注目すべき旧ソ連邦の国の1つであろう。
【2004年3月22日】NATO・ウクライナの目標計画:2002年の行動計画の枠組みに基づく年次目標計画である。特にNATO参加国はウクライナに対し自由・公正な選挙およびメデイアの自由の実現の必要性について強いメッセージを送った。
【2006年4月7日】NATO・ウクライナの目標計画が公表された。
http://www.nato.int/docu/update/2006/04-april/e0407a.htm
(筆者注2)ここでいう「法律」の意味は、注1で述べた民主主義や法の支配を指すことは言うまでもない。
(筆者注3)wikipediaによるとウクライナがNATOの加盟国になるかどうかにつき、2008年に最終決定が行われるとされている。しかし、同国内には加盟反対者も多く大統領の舵取りは今後も難しさが増すであろう。
〔参照URL〕
http://www.bundesreggierung.de/
BPA Press Release:Merkel congratulates newUkrainian Prime Minister
Copyrights (c)2006 福田平冶 All rights Reserved
さらに、わが国のメディアでは詳しく紹介されていないが、NATOとウクライナの関係強化を巡る旧ロシア連邦の国々を巡る国際戦略の動向もその伏線に見て取れる(筆者注1)。
「わが親愛なるウクライナ国の首相殿
私はあなたがウクライナの首相職を引き継いだことにお祝いの言葉を送ります。あなたに今後待ち受ける各種の任務につき、幸運とその成功が訪れることを期待します。
わが国は、貴国が法律に基づき(筆者注2)独立、安定、かつ民主的なウクライナ国家となることに強い関心をもって見守っています。また、わが国政府は、貴国の改革を支援するとともにNATO機構(Euro-Atlantic Institutions)とのより関係強化(筆者注3)を強く希望するものです。」
ドイツ連邦 首相 アンゲラ・メルケル
(筆者注1)NATOとウクライナの最近の関係強化の推移を簡単に見ておく。
【2002年11月3日】 NATO・ウクライナ行動計画(プラハ・サミットで採択)であり、この実現化に向けた責任はウクライナにあり、そのための課題は、①民主主義、②法の支配、③人権保護、④市場経済の強化である。最大の優先課題はNATOが支援するのは防衛問題と国家の安全対策である。
具体的な内容は以下の通りである。なお、ウクライナの取組みの進捗状況につき、2年に1回NATOとウクライナの外相級が準備した報告書に基づきNATOで査定会議が開かれている。
第1節 政治および経済問題
1.政治問題と安全問題
(1)国内の政治問題
権力の分離、司法の独立性、民主的選挙、政治的多元性、言論の自由、少数民族や宗教面の廃止である。とりわけ法制度改革の中心は欧州評議会の人権条約への参加である。
(2)安全強化に向けた国際的な政策
自由なヨーロッパの実現、テロとの戦い、兵器の大幅削減、地域の不安定性や安全面の脆弱性の解決である。
第2節以下省略
なお、米国ブルッキング研究所の副所長兼外交政策部長のカルロス・パスカル氏(Carlos Pascual)は8月3日付のヘラルド・トリビューン紙において、今回のウクライナの組閣について触れつつ、またオレンジ革命の意義、国民の意識の変化などを踏まえ、ウクライナのNATOへの積極的な加盟の姿勢ならびにロシアとの友好関係強化を呼びかけている。なにせ、同国は、本年5月の調査で年率成長率は8,5%であり、人口4,700万人を擁する国である。
http://www.brookings.edu/views/op-ed/pascual/20060803.htm
また、8月5日の朝日新聞によると、新内閣では、「我々のウクライナ」幹部のタラシュク外相が、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を進めてきたグリツェンコ国防相とともに留任。大統領に近いルツェンコ内相も留任した。安全保障分野は、これまで通り欧米圏への統合を推進できる布陣となったとある。注目すべき旧ソ連邦の国の1つであろう。
【2004年3月22日】NATO・ウクライナの目標計画:2002年の行動計画の枠組みに基づく年次目標計画である。特にNATO参加国はウクライナに対し自由・公正な選挙およびメデイアの自由の実現の必要性について強いメッセージを送った。
【2006年4月7日】NATO・ウクライナの目標計画が公表された。
http://www.nato.int/docu/update/2006/04-april/e0407a.htm
(筆者注2)ここでいう「法律」の意味は、注1で述べた民主主義や法の支配を指すことは言うまでもない。
(筆者注3)wikipediaによるとウクライナがNATOの加盟国になるかどうかにつき、2008年に最終決定が行われるとされている。しかし、同国内には加盟反対者も多く大統領の舵取りは今後も難しさが増すであろう。
〔参照URL〕
http://www.bundesreggierung.de/
BPA Press Release:Merkel congratulates newUkrainian Prime Minister
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